ただ会いたくて

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駅に着くと人混みをかき分け脇目も振らず家で待つと言う鈴葉の元へ向かう隼人。信号待ちで足止めされている僅かな時間も惜しいくらいだった。 「鈴葉っ。」    玄関の前で壁に寄り掛かる鈴葉を呼ぶ。 「あ、久保山君。突然ごめんね。」 「いや、大丈夫だけど。」 「仕事早く終わったの?」 「うん。残業無しで今日は早く家に帰ってゆっくりしようかなと思ってたから丁度良かった。」 「そうなんだ…。」 鈴葉は隼人を前に何故か俯いてしまう。 ───言わないと…伝えないと。久保山君に本当の気持ち。 「ん?どうした?」 俯く鈴葉を心配し声を掛ける隼人。 ガバッ、、 「す、鈴葉っ?」 「久保山君。待たせてごめん。」 鈴葉はいきなり隼人に抱き付きそう言った。隼人は鈴葉に抱き付かれたまま固まっている。 「とっくの前から久保山君が好きでした。」 「…好きって今は違うの?」 「今もこれからもずっとって意味。」 鈴葉の言葉を聞いた隼人はゆっくりと体を離し鈴葉に向き合う。そして… 「ふぅ。やぁっと言える日が来た。」 「え?」 「俺と結婚して下さい。」 「っ…。私と?」 「そう。鈴葉は俺とは体から始まったって思ってるけど俺は鈴葉の事、大学の頃から好きだった。見た目チャラい俺と清楚の鈴葉は釣り合わないと思ってなんか勇気出なくて告白も出来ず終いで卒業だったからな。心の隅でずっと後悔してたんだ。」 「大学の頃からなんて私全然気付かなかった。」 「だろうな。けどあの夜偶然兄貴のバーで会って「あぁ…やっぱり好きだ。」って思った。だから鈴葉を抱いたのは鈴葉に愛を伝えるつもりで抱いた。邪な気持ちは少しだって存在しなかった。」 「その言葉信じて良いの?」 「勿論だ。」 「分かった。ありがとう。私は体も心も久保山君が好きです。」 「それは光栄だ。じゃあ結婚してくれる?」 「結婚に向けてとりあえず付き合いたい。」 「え~、そんな時間勿体ないよ。直ぐ結婚しても変わらないだろ?この先末永く一緒に居る訳だし。」 「う~ん…。ま、それもそうなんだけど、じゃあ半年後にしよう。恋人付き合いしたいの。」 「…しょうが無いか。了解。それはそれで楽しいしな。未来の俺の奥さんに頼まれちゃねぇ。」 「ふふふ。ありがとう。」 体から始まる恋なんて絶対にありえないと思っていた。だけどそう思っているのは私の頭がマニュアル化しているだけなのかもしれないなんて考えたりもした。あんな大胆な行為をお願いしてから私と久保山君の関係は普通を装ってはいたけれど実はそうじゃ無くて久保山君に会う度、触れられる度、そして思い出す度に私の毎日は恋の革命が起きたみたいだった。 普通の王道の恋愛しか受け入れられないなんて思っていた私だったけど恋なんて好きになってしまったら…恋に落ちたら周りなんて目に入らないのよねきっと。例えそれが二人にとって高いハードルが存在していたとしても。 「指輪買う?」 「婚約指輪?」 「先ずはその手前のペアリング。」 「うん。」 「今日はまだ時間も割と早いしこれから飯食いがてら行くか?」 「それも良いけどでも今日は…。」 「今日は…?あぁ~成る程ね。ふっ。」 鈴葉の顔が真っ赤になっているのを隼人は気付いた。 「よ~し。じゃ、早速部屋入ってあれやこれや丸ごと可愛がらせて頂くよ。」 「や、あの、そのぉ、、」 隼人は玄関の鍵を開けるとヒョイッと鈴葉をお姫様抱っこしニコリと笑いながら部屋へと消えて行ったのだった─────。    求愛婚~カラダが愛を求めてる~                     完            
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