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鈴葉と弘道は喧嘩も無く仲良しなカップルだった。一回り以上年上の弘道は常に鈴葉の事を大きな優しさで包んでくれていたし鈴葉もその愛に応え自分だけを見てくれる弘道に絶大なる信頼感を持っていた。だからこそどうして弘道があんな事をしていたのかが理解出来ずにいた。
「鈴葉。その事について彼に連絡したの?」
「してない。なんか現実受け入れちゃうのが怖いのとあとこっちから連絡なんてしてやるもんかってちょっと思ってたりする。」
「まぁこんな事言うのもあれだけどキスして抱き合ってたら浮気確定だからな。」
「あぁ~、だよね、だよね、やっぱり浮気確定だよね。」
注文したジンライムが届き空かさずグイッと呑む鈴葉。
だが隼人に浮気確定と断言されカチッと何かのスイッチが入った鈴葉はお酒の力が後押ししてこんな話を隼人に振る。
「ねぇ、久保山君。」
ガタッとグラスをテーブルに置く。
「何?」
「果てるって何?」
一瞬驚いた顔をした隼人だったがこう切り返す。
「チェイサー貰うから一旦落ち着け。」
タッチパネルを操作する隼人の手を上から押さえながら隼人を見上げる鈴葉はどこか不満げな表情だった。
「要らない。頭は酔って無いから私。」
カタッとタッチパネルをテーブルに置く隼人。
「もしかしてそんな様な事彼に言われたの?」
「言われた訳じゃ無いけどその…疑問があるの。ほら、こういうのって男の人の方が詳しいからと思って。」
鈴葉は弘道との夜の営みについても隼人に打ち明けていく。行為に対して痛みや拒絶感は無く体も愛撫を喜んでいる為物足りなさや例え果てなくてもそう言うものなのかと自分を納得させ弘道が何時も先に果てるのを見ていた。鈴葉は自分よりも大好きな弘道さえ気持ち良くなってくれればそれで良いとそう思っていた…今までは。隼人に弘道の話をして少し弘道を客観的に見ていく内にずっと抱えていたそれをふと口にしたくなり隼人に投げ掛ける。
「男のが詳しいねぇ…。」
「なんか、それも今思えば腹立ってくるんだよね。浮気しといてそれで私との行為では自分だけ気持ち良くなってとか…あぁ~っ、もぉっ!」
またグラスを手にし最後迄呑み干した。そんな痛め付けるみたいに酒を口にしていく鈴葉を横目で見つめる隼人。
ガタッ。
「私だって一つ位良い事あったって良いじゃない…貴方が私で楽しんだ様に私も同じ…ううん、それ以上のものを堪能したいわよっ…。」
グラスを置き俯きながらブツブツと独り言を言っている鈴葉を隼人は黙って聞いている。
すると赤い顔をガバッと上げて隼人に向き直る。
「久保山君なら出来るよね?」
「っ。」
「私の願望に応えて欲しいの。」
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