プロローグ

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え?ホントに選べない? かなり、久しぶりに焦りました。 「玲子ちゃんってめちゃくちゃ冷静だね」 クラスで唯一の仲良い、箕川萌音(みのかわもね)の言葉を思い出した。 こんな性格だからか友達と呼べる人が数人しかいない私に、小三の時何も知らずに話しかけてきた素直な少女。なんの手の加えていないセミロングくらいの髪に、素朴すぎる微笑みが超似合う(こういうの森ガールっていうの?よく知らないけど)。ホワイトデーに男子からお菓子を計十六個ももらった、私の自慢の友達。 そんな萌音が「冷静」だっていうんだもん、私ってかなり落ち着いている人かも!と思ってその時はなんか嬉しかった。 で、今その冷静さを失いかけている。え、どうしようどうしようマジで! 萌音はもう理科係を希望済み。しょうがない、安全策で行くか。私は理科係の下に名前を書いた。 その時、後ろで椅子を引く音が聞こえた。 ん⁈誰だ私以上に係活動に興味のない人は……! そんな疑問もすぐに消えた。 諫山くんか、納得。 諫山律、おそらく学校一の天才。横顔がかなりの美青年。運動なんて全くしてなさそうな細い腕と白い肌が、体育の授業で映えて見える。一見女子に超モテそうな天才的完璧なヒトだが、問題は全て性格にある。 真面目そうに見えて授業は全く受けず、教室の後ろの方の席で一人、どこかの本屋のブックカバーをつけた内容不明な本を読んでいる。その内容を後ろから覗き込んだ人がいて、その人の情報によれば、何かの哲学の本だとか。意味不な本読んでながら私の知る限りテストは毎回百点。不思議すぎる。な訳で周りから天才(悪く言えば変人)扱いされている。 あそうだ、こんな噂も聞いたことある。五年の時「学校一の美少女」と呼ばれる里中さんが、諫山くんにいきなり告った。ありえないでしょ、フツー。まずいきなりっていうのが信じられん。 で、信じられないのは里中さんだけじゃない。その告白に諫山くんはどう答えたか。それがまたまた意味不でさあ……。 「君の好意には感謝するが、僕はそのようなことをする時間の余裕、あるいはその方法が理解できない」 は? 結局学校内にこの言葉の意味を理解できた人は一人もいなかった……!だからみんなそれぞれテキトーに解釈している。 まあ多分振られたんだけどね。私はそれで良かったと思っている。もしあの二人がくっついてたら世界終わるかも……いや、想像できません。 そういう諫山くんの発言ときたら、みんな耳を閉じる(気分になる)。聞けば聞くほど頭がおかしくなるから。でも私は片耳だけ開いて(そういう気分で)少しだけ諫山くんの話を聞こうと思った。全員で無視って、いじめてるみたいになりたくないから。 しっかりと間をとった上、諫山くんが発した最初の一言は意外にも簡単だった。 「係って、これだけですか」
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