プロローグ

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?? 「希望者がかなり偏っているじゃないですか。これじゃいつまで経っても決まりません」 たしかに正論。で、その偏りを、どうしろと? 「解決策として、新たに別の係を作るというのはどうでしょうか」 ??? またまた教室がざわめく。私はこのざわめきが嫌いだった。言いたいことがあるんなら、はっきり言えばいいのに。そうやってこそこそしてるって、正直全く意味のないことだと思う。 って言ったって、諫山律の言葉はやはり理解不能。増やしたところで、何になる? 「諫山ぁ、増やしたらなんかさあ、逆にさらにもめるんじゃね?」 私の意見を代弁したように、後ろで三室が口を挟む。 「実際やってみたほうが早いでしょう。例えばX係、Y係という理科係と同じくらいラクな係があったとします」 うわぁ。どんどん話が諫山ワールドへ入っていくよ〜。 「そうすれば、ただラクしたいという理由で理科係を希望した人がXとY分散されます。するとジャンケンで勝つ確率も高くなるので、結果的には、全体で見ると希望した係になれる確率も上がるわけです」 すごい……。 私はこの時初めてこの人の天才さを知った気がした。言ってることは、いまいち意味不だったけど。 すると三室に続き他の男子も口を挟む。 「そんなこと言ったってさ、新たに係考えるのもめんどくせーし」 「ジャンケンすればいいじゃん。そっちの方が早く終わるしさ」 「ちょっと、一応授業中なんだから静かにしてよ!」 仮学級会係の藤乃さんが声を上げたけど、一向に静かにならない。わかってないねえ、こんな時に叫んだって男子は聞かないよ。 最終手段として先生を見る。でも最初から生徒たちに全部任せるつもりだったらしい、後ろの机で宿題のマルつけなんかしてる。 何でみんな、聞かないんだろう。自分の意見も言わないで、特定の人の意見には文句つけて。そんなことするよりは、意味不ながらちゃんと発言した諫山くんの方が、よっぽどえらいと思う。そんなの絶対に、おかしい……! 私は立ち上がった。突然の出来事にクラスが騒然としている。でも、今は全然気にならなかった。私って、全然目立つようなことするキャラじゃないけど、そんなことどうだっていい。黒板の前まで来て、端っこに大きく「X係」と書く。理科係の下に書いた、自分の名前を消す。新たに「X係」の下に書き加える。 やってること、多分みんなにとっては意味不。だけど、これで教室が静かになった。 自分の席に戻る時、クラス全員が驚いた目を私に向けていた。 そこには、普段感情なんて滅多に表に出さない……諫山律の視線もあった。
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