1人が本棚に入れています
本棚に追加
☆
「いや〜すごかった玲子ちゃん、かっこよかったわぁ〜」
隣で萌音が目を輝かせている。六時間目後の帰り道。
「一瞬にしてこのうるさいクラスを黙らせるんだもん天才だよ。私こんな人が友達でマジうれしいっ!」
そんな女子ウケしそうなセリフを私に言っても無駄ですけど。通じませんから。
「まぁた謙遜しちゃってえ。本当にそうなんだってば」
萌音がなぜこんなに興奮しているのかはさておき。実はあの後。
結局私の意味不行動に、さらに教室がざわめいちゃって。先生がやっと反応した。
「あと十五分で六時間目終わるけど…… 早く決めないと係活動、できませんよ」
「それが……」
藤乃さんがこれまでの状況を簡単に説明した。
「X係、か。つまり内海さんは希望なし、どの係でもいいってことですね?」
そうそうそう!その通りです。
「あ、あとまだ希望してないのが、諫山くんです」
藤乃さんがすぐに付け加える。このリーダー感、ほぼ学級会係決定だね。
「なるほど。他の係は……理科係の希望が多いのか。理科係希望者の中で、譲ってもいいよって人いる?」
反応なし。
「しょうがない、じゃあジャンケンか……」
「先生、高松さん手あげてます」
あ、ほんとだ……気づかなかった。
高松さんは、五年の時に転入してきた人。そのせいか、ありえないくらい存在感薄くて。席も一番後ろの窓際だし、先生でも気づかないことがある。逆に凄いと思う。
「あの……私譲ってもいいです」
静かな教室で何とか聞き取れた声。でもそれは、しっかりと私に届いていた。
高松さんが私に気づいて、薄いフレームの眼鏡の奥の目をキュッと細める。うん、萌音とはまた違うタイプの可愛さがあるなあ。
「お、ありがとう高松さん。でもまだ理科係、多いんだよなあ。よし、ジャンケン大会だ。理科係希望者起立!」
最初はグー。ジャンケン……。
本気でジャンケンに挑む人たち。関係ない人なのにジャンケンに割り込んで勝ったとか負けたとか言ってる人もいる。そしてその風景を私はボーッと眺めつつ……。
「わあぁぁうっそー!!」
甲高い叫び声で私は体を起こす。小六男子にしてまだ声変わり前のちょっと幼い声が、教室に響いた。私でもあんな声出せないんじゃない?
その声の主を確認すべく、教卓前を見ると渋谷朝汰がいた。クラスの中でもなかなかうるさい男子の一人。身長は男子の中ではクラス一低い。なにかと突っ込んでくるタイプの人だ。そう、諫山くんと正反対、な感じかな。
最初のコメントを投稿しよう!