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エピローグ
「内海さん」
「何、謎子ちゃん」
何気なく入れ込んだつもりだったのに。高松さんは目を見開いた後、それから耳の端から真っ赤になった。逆にこっちが衝撃なんですけど。えっと高松さん、これは今恥ずかしがってる状況で、合ってます?
「な……なぞこちゃん……ですか」
そう、一部の間でささやかれてる高松さんのあだ名。存在感0%なんて、今では全然そんなことないんだけどね。むしろ、私の方がクラスでの存在感は薄いと思う。
「嫌かな……その呼び方。私、結構好きかも」
ちょっとノリでそう付け加えたら、高松さんは思いっきりわざとらしく、私から顔を背けた。
「……いいですよ、それでも。バースデー係の活動中だけでお願いします」
「でも、いきなりは私も慣れないなぁ。これからも高松さんでいくよ」
「ああっ……でもそれも……ちょっと疎遠な感じがするというか……」
残念がってるねぇ。やっぱり高松さんには、萌音とはまた違った可愛さの持ち主だ。
「なんなら、僕が呼ぼうか?謎子ちゃん」
「え……!」
振り返った先に、諫山くんがいる。今度こそ石化した高松さんと一緒に、私も並んで石化していた。なにこれ夢?「茅さん呼び」以上の衝撃なんですけど。
「ん、なになに。高松さん、超小さい声で『ぜひお願いします』って言ってるよ」
「言ってません!なんてこと言うんですか内海さん!原稿用紙課しますよ⁈」
さらに真っ赤に染まっていく高松さん。ああもう、可愛いんだよなあ。私男子だったら、多分高松さんのこと好きになってるよ、とか考えてしまう。
「あれ、今日渋谷来てないけど」
もうチャイム鳴ってだいぶ時間経ってるけど。さすがの渋谷も、これくらいの時間にはいつも来てるのに。
「渋谷には、今日の係活動は休みだと言ってあります。なんてったって」
高松さんはそこで言葉を切って、最初に作った名簿を差し出した。
「次の誕生日は、渋谷なんですよ」
「さおちんにゃん」を超える、とんでもないサプライズを企んでいそうな高松さんは、すでに目をギラギラさせてるし。
なんの前触れもなく、『現代語訳版 古事記』を開いた諫山くんもなんか笑ってるし。
この人たち、どうするつもりなの?
でも私も。やっとそんな中に溶け込んでいけたみたいで。
これからもみんなのハッピーバースデー、全力でお祝いしていきます!
[続く?]
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