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楽しく仕事を終えた未羽は、彼氏と同棲中の家に足取り重く帰宅した。
最近では家の方が気が重い。
同棲中の彼氏、信太との雰囲気が悪いのだ。
「ただいま、信太」
リビングでゲームをしている信太から返事はない。
聞こえていてあえての無視なのか、
聞こえていないのか。
確かめるのも面倒に感じてしまう。
未羽が切り替えて信太の隣に座り、再度ただいまと告げる。
信太は未羽に視線一つ寄越さないままゲームを続けている。
「スる日くらい、早く帰って来れば?」
「うん、でも仕事楽しくって」
「セックス日、決めてるんだから疲れててもスるよ?」
「わかってる」
ゲームと会話している信太を残して、未羽は浴室に足を運んだ。
未羽は熱いシャワーを浴びてぼんやりと考える。
信太とは幼馴染で、高校も大学も同じ腐れ縁だ。
長い間そばにいて、付き合うならコイツかなってお互い言わずとも感じていた。
大学生の頃に付き合い始め、卒業と同時に同棲し始めたのだ。
お互いに空気みたいなもので、
結婚だってなんとなく見えている。
(これが運命の恋なんだよね)
熱いシャワーが未羽の身体を滑って流れて落ちて行った。
(幼馴染との恋なんて、
理想的な運命じゃん。
少女漫画でも、乙女ゲーアプリでも定番中の定番)
乙女ゲーアプリにドハマリする未羽は運命の恋が大好きだ。
それこそ高校生の多感な時期からずっと
運命の恋に憧れていると言い続けて来た。
そうして手にした
幼馴染との恋。
どう見ても、これが運命に決まっている。
(これ以上に、運命なんて見つかるわけがないんだよ)
そう思っていたはずなのに。
風呂から出てもゲームしか見ていない信太に、
未羽はつい言ってしまった。
「私のこと全然見てないじゃん!今日はシない!」
「は??いきなり何」
やっと信太の視線がゲームから未羽に向いた。
だが、未羽は背中を向けて寝室に飛び込んだ。
(本当にこれが、運命の恋?)
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