第一話

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楽しく仕事を終えた未羽は、彼氏と同棲中の家に足取り重く帰宅した。 最近では家の方が気が重い。 同棲中の彼氏、信太との雰囲気が悪いのだ。 「ただいま、信太」 リビングでゲームをしている信太から返事はない。 聞こえていてあえての無視なのか、 聞こえていないのか。 確かめるのも面倒に感じてしまう。 未羽が切り替えて信太の隣に座り、再度ただいまと告げる。 信太は未羽に視線一つ寄越さないままゲームを続けている。 「スる日くらい、早く帰って来れば?」 「うん、でも仕事楽しくって」 「セックス日、決めてるんだから疲れててもスるよ?」 「わかってる」 ゲームと会話している信太を残して、未羽は浴室に足を運んだ。 未羽は熱いシャワーを浴びてぼんやりと考える。 信太とは幼馴染で、高校も大学も同じ腐れ縁だ。 長い間そばにいて、付き合うならコイツかなってお互い言わずとも感じていた。 大学生の頃に付き合い始め、卒業と同時に同棲し始めたのだ。 お互いに空気みたいなもので、 結婚だってなんとなく見えている。 (これが運命の恋なんだよね) 熱いシャワーが未羽の身体を滑って流れて落ちて行った。 (幼馴染との恋なんて、 理想的な運命じゃん。 少女漫画でも、乙女ゲーアプリでも定番中の定番) 乙女ゲーアプリにドハマリする未羽は運命の恋が大好きだ。 それこそ高校生の多感な時期からずっと 運命の恋に憧れていると言い続けて来た。 そうして手にした 幼馴染との恋。 どう見ても、これが運命に決まっている。 (これ以上に、運命なんて見つかるわけがないんだよ) そう思っていたはずなのに。 風呂から出てもゲームしか見ていない信太に、 未羽はつい言ってしまった。 「私のこと全然見てないじゃん!今日はシない!」 「は??いきなり何」 やっと信太の視線がゲームから未羽に向いた。 だが、未羽は背中を向けて寝室に飛び込んだ。 (本当にこれが、運命の恋?)
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