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「遅くなったね。未羽、疲れてない?」
「いえ、私も早く先輩たちみたいにしっかり仕事できるようになって、乙女ゲーアプリ作りたいです!」
「あれ?社長の僕みたいにじゃなくて?」
「黙秘します!」
未羽はすっかり理人に軽口を叩くようになっていった。
毎日の業務の中で理人は軽口で怒らない人だと、よく理解していた。
「僕が送るよ」
「いえ、一人で帰れますよ」
遅くなった会社からの帰り道、社長自らの申し出に未羽は丁重にお断りした。
「ダーメ、社長命令」
未羽はそれを言われると従うしかなかった。
理人とタクシーにのりこみ、未羽は考え事に浸る。
未羽が信太を拒否したあの日からずっと、険悪な日が続いていた。
(倦怠期ってやつだよね、ただの。
運命の恋に試練はつきもの。
大丈夫、大丈夫)
「未羽?着いたよ」
「あ、ありがとうございます!」
タクシーはいつの間にか、未羽と彼氏の同棲している家の前に到着していた。
「下りないの?僕とこれから遊びに行きたいってこと?」
「い、いやいや下ります!」
クスクス笑う理人に見送られて、未羽は信太の待つ家へと帰宅した。
(あ、あれ?
私、タクシーで住所言ったかな?
ぼーっとし過ぎだな)
未羽を送り終え、不遜な顔をした理人はオフィスに戻った。
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