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スッケスケの社長室の中で抱き合い始めた二人を見て、社員たちはとっくにフロアを後にしていた。
社員たちは真昼間から仕事をブッチして打ち上げに繰り出した。
社長公認のお休みだ。
昼間っからBARで飲みだした百華は、栄太郎に笑う。
黒子社員たちも浮かれて一緒に飲んでいた。
「ド性癖3本立てって話だけどな」
「高身長、美顔に、スーツ社長だよね」
ビールを煽った栄太郎は百華に首を傾げた。
「そのうち努力でカバーできるのはスーツ社長だけ。
元から天然で2つクリアしてるだけで、
理人はまあまあな運命寄りだろ」
「たしかに」
「しかもあのウッザい体質の理人といて、未羽はケロッとしてる」
「お互い最初から相性いいんだよね」
「人騒がせな奴らだ」
そう言う百華の顔が嬉しそうなことを、栄太郎は知っている。
おそらく今日は帰って来るなLIMEが来て、明日には社宅シェアハウスから出て行けLIMEが入る。
予想の範囲内だ。
『きちんと、僕のにしようって思ったんだ』
何度も聞いた理人の決意が、栄太郎の耳に残っている。
栄太郎はビールジョッキを持ち上げて掲げた。
「『きちんと』した仕事について
『きちんと』未羽ちゃんに夢を見せて
『きちんと』両想いになった」
栄太郎はビールを飲んで笑った。
「さすが、理人さん」
栄太郎は立ち上がり、営業部エースの音頭取りを始めた。
黒子社員たちが栄太郎に注目する。
「ではー!皆さんご一緒に!未羽ちゃん、社長!」
「「「おめでとうーー!!!」」」
社員一同で見守った恋は見事実り、
念書契約は完了した。
社長お手製の運命の中で、どうかいつまでもお幸せに。
〈完〉
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