第15話 サボタージュ

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第15話 サボタージュ

 結局またチビどもに絡まれて、家でダラダラしてたらホームルームには間に合わなかった。  1限目の授業が始まる前に教室に入った。 「あー写楽さん! 今朝はめずらしく早いッスね、おはようございます!!」  クソモヒカンに目敏く見つけられた。遅刻してんだっつーの。  俺は気だるげに返事を返す。 「オウ」 「そーいえばさっき来てましたよ、写楽さんのペットの遊ちゃん。ドアのとこから中を伺う程度でしたけど」 「そーかよ。――じゃあ俺、今から遊とフケっから」 「え!?」  俺はほぼ空のカバンを机の上に置くと、そのまま教室を出た。 「ちょっ、ちょっ、写楽さん!? 来たばっかりじゃないですかぁ!? じゃあ俺も行きま――」 「ついてくんなよ、クソモヒカン」 「そ、そんなぁ~」  ギロッと睨んで制した。腰を上げようとしていた他の舎弟も同様だ。 遊といるときは、何故か誰にも邪魔をされたくない。俺は授業が始まる前に、遊のいる三組へと向かった。  遊は廊下側の席だからわざわざ中に入らずとも、廊下から遊のいる席に向かって窓をコンコンと叩けば気付くだろう。  窓は磨りガラスだが、コイツは多分シルエットで俺のことが分かるに違いない。  ……ほらな、立ち上がった。多分伝わるだろうと思って、俺はそのまま廊下を歩きだした 「しゃ、写楽……っ!」  声に後ろを振り向くと、真っ赤な顔で教室から飛び出してきた遊がいた。 「……屋上行くぞ」 「う、うんっ」  こいつは真面目そうだから、授業をサボッたことなど一度もないだろうけど、意外なほどアッサリと俺の後ろを付いてきた。何も言わずに。  朝の屋上にはさすがにまだ誰もいなかった。  今は7月で日中は茹だるくらい蒸し暑いけど、朝の空気はひんやりとしていて気持ちよかった。  俺は日陰になっている場所へ向かうと、冷たいコンクリートの上に背をもたれて膝を立てて座った。  遊もくっついては来たものの、座らずに俺の前に立ちつくしている。 「あ、あの」  遊が、遠慮がちに口を開いた。 「あんだよ」 「一限目の授業……さぼるんだよね?」 「そーだよ」  言わずもがなだろう。まさかすぐに戻る気でいたのだろうか。 「隣に座ってもいい?」 「ん」  自分から希望を言ったコイツに少し気を良くして、俺は少し右にずれて席を開けてやった。  遊はその場所にちょこんと体育座りで座った。 「あの、おはよう。写楽」 「……はよ」  ずいぶん今更な挨拶だけど、こいつはずっと言いたかったんだろうな、と思った。  俺が返事を返したら、すごく嬉しそうに笑ったから。  ……なんでだろう、なんか意味もなくドキドキする。  こいつの目が無駄にキラキラしているせいだろうか。  今日もコイツは声と目と表情と態度で惜しげもなく言っている。  俺のことが好きだって。 「あれ? 写楽、腕怪我してるの? 血が出てる!」 「ん? 今朝ちょっとな……。大丈夫だよこんくらい」  もう夏服だから、朝に作った俺の傷は生々しくむき出しだった。 「でも、すごく痛そうだよ……」  心配そうな顔で俺の傷を見つめる遊に、なんだか少し悪戯心が湧いた。  そして次に言い放った俺の言葉は、自分でも少し驚くものだった。 「……そう思うんなら、舐めろよ」  遊は、5秒後に反応した。 「え?」 「お前、俺のペットだろ。俺のことを心配してんなら、言葉よりもまずは態度で示せば?」  自分で言っといてよく分からない理屈だ、その上変態くさい。 でも俺は確信していた、遊は俺の言うとおりにする、と。 「ほら」 「……」  俺はずいっと傷だらけの汚い腕を遊の前に突きだした。  遊は少し迷った顔をしていたが、そのうち観念したように俺の腕をとり、自分の手をそっと添えた。 そして少し震えながらもうっとりとした目をして、赤い舌を少し出し、俺の腕の傷を丁寧に舐め始めた。 「……ッ……」  なんだこれ。 自分で仕掛けておいてアレだが、予想以上に遊がエロい。 「ピチャ……レロ……」  遊は俺の腕をしっかりとつかみ、最初はチロチロと舌先で舐めているだけだったが、そのうちだんだん犬のように舌の表面でベロベロと舐め始めた。  その顔は湯気が出そうなくらい赤くて、とろけそうな半開きの目と口が、とてつもなくエロい。  熱い息を吐きながら、遊は俺の腕を夢中で舐めている。 「ちょ、もう放せ……」 「ンッ……」  俺は遊の額を掴み、腕を舐めるのをやめさせた。 そして何故か今度はその小さい口に、自分の指を三本突っ込んだ。 「ムグッ!?」  少し苦しそうに顔を歪める遊。 「舐めろ」  俺はまた命令した。  指先で遊の舌をつまんで引っ張ると、遊は苦しそうに眉を寄せ、少し泣きそうな顔をして、俺の指に舌を絡ませ始めた。
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