第3話 ギャルとモヒカン

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第3話 ギャルとモヒカン

 次の日、2時限目が始まる少し前の時間に登校した。 廊下に立って、一応教師に遠慮して休み時間になるのを待ってから教室のドアを開ける。 「あぁっ! 写楽さんっ! おはようございます!!」 「おはようございます!」 「おはようございまッス!!」 「写楽ぅ~おはようっ」 ドアを開けた瞬間、教室の色んな方向から声をかけられた。  俺が在籍している2年4組の教室は、クラスメイトの半分以上はギャルとヤンキーで構成されているため、他のクラスよりも見た目が派手だ。  そんな教室の中、俺は誰の方も見ずに適当に返事をして席についた。勿論、窓際の一番後ろの特等席だ。 「ねぇねぇ写楽っ、今日の放課後はひまぁ!? デートしようよ! てゆーか昨日はどこいってたの!? リナ、ずっと探してたんだよぉ~っ」 クラスの中でも一際ド派手なギャルが俺に近づいてきた。  濃い化粧にバサバサのつけまつげ、変な色のカラコンでフル装備していて、髪型はそれどーなってんだ? って疑問に思うほどの装飾とアレンジをしている、『自称』俺の彼女のリナだ。 なんでこんなに他人事なのかというと、俺が了承した覚えはないからだ。とりあえず顔はまあまあ可愛いし(すっぴんは見たことないが)胸もデカいからヤることはヤってるけど、別に好きでもなんでもない。 「暇じゃねぇし。つーかお前に関係ねぇだろ」 「そんなこと言ってぇ、リナに黙って他の子とデートなんてしてたら許さないんだからねぇ~」 「別にお前の許可いらねぇだろ」 「いるもんっ! リナ、写楽の彼女だもん」 「勝手に言ってろ」 必死で否定する理由もないから適当にあしらっていたら、周りの奴等がいつの間にか勝手にリナを彼女に認定していた……というか、リナに周りを固められていた。 女ってこえー。まあ、誰が彼女だろうがどーでもいいんだけど。 「写楽さぁん! 昨日マジでどこ行ってたんスか!? 俺も校内中を走り回って探しましたよ! 3年の奴らに拉致られたんじゃないかと思うと心配で心配で! でも無事でよかったッス!!」 こいつは舎弟の一人で、多分校内で一番目立つ頭をしている。赤髪でとても今時の不良とは思えぬモヒカンスタイル、宮田だ。 「校内探し回る前にメールか何かしろよ、無駄な奴」 「あっ! そーでした! アハハ、忘れてましたぁ!!」 とりあえず、バカだ。破滅的なバカだ。 たまにバカすぎてイライラするけど、俺に対する忠誠心はホンモノらしい。何故ならモヒカンにしろと言ったのは俺だから。 つまり、ホンモノのバカということか? 本当にするとは思わなかった。  今では宮田自身もその髪型を気に入ってるらしいから、俺も生ぬるい目で見てやっている。
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