雨宮卯月は腐男子である

（12）楽しい尾行

　おはようございます、元祖主人公の雨宮卯月でぇぇす！！
　現在俺は、永田氏がマジで八代先輩と手を繋いで登校するのか気になって気になって、りっちゃん・あいちん・かなやんをお供に、朝から永田氏と八代先輩を尾行しているのであります……！

　──昨夜、ビデオ通話で永田氏から『友達でも男同士で手を繋ぐのはおかしいでござるよな？』という正常な頭でちょっと考えれば正解が弾きだされるような質問をされて、とりあえず『おかしいことじゃないよ』と肯定しまくった。
そして永田氏は何故か、俺のめちゃくちゃな説得に納得したようだった。

ちょっと前の永田氏だったら信じられない素直さだ。いや、素直っていうかなんて言うか、アレだ。

今の永田氏は恋をしたことで、頭がお花畑状態で正常な判断ができなくなっている……！！（しかも無自覚）

このことをりっちゃん達にグループラインで報告したら、物凄ぉぉくグッジョブされたけど、俺は萌え半分、心配半分な気持ちで現在永田氏を尾行しているんだ。ほんの少しだけ責任を感じなくもないし……。

っていうか待って！！ 今、俺の目に間違いがなければ永田氏の方から手を繋ぎにいったんだけどぉ！？ えええええ！？

　八代先輩、これは夢じゃないかって狼狽えてる……！！　そ、そうだよね、俺だってそう思うよ！　あの超塩対応で有名な永田氏が自ら八代先輩の手を握るなんて……えっ！？　ま、待って待って、笑ってる！？　八代先輩のリアクションを見て、永田氏が笑ってるぅぅぅ！？

　なにあれ、かっかかか、可愛すぎない！？　平凡メガネ男子（普段は塩）のデレ威力やっばぁぁぁ！！　ここら一帯が焦土と化しそうぅぅ！！！

「我々はヤバいものを見ているわ……萌え過ぎてハゲそう……」
「「同意……」」
「俺はリアルにはハゲたくないけど同意……」

――男の子は髪の毛大事。

　むむっ、モブの三年生が永田氏たちが手を繋いでいるのを見てゴチャゴチャ言ってるな。まあ何か言いたいのは分かるけど、それがモブの役目だからね？　うんうん。お勤めご苦労様でーす。

「あっ、今度はアイツじゃん、二年の雨宮」
「知ってる、いつも可愛い女子を三人も侍らしてる生意気な奴だ」
「ズルいよなぁ、なんであんなモヤシみてぇな奴がモテるんだろ……アイツのいる美術部じゃあ毎日奴を取り合って女子がケンカしてるらしいぜ」
「はぁ！？　マジかよ！　八代みたいなイケメンがモテるなら分かるけどさ……」
「イケメンの八代は地味な男と付き合ってて、あんなモヤシ野郎が可愛い女子にモテまくりとか、この世界おかしいよな」
「ほーんとほんと」

　……俺への風評被害も相変わらずですな。りっちゃん達から取り合われたことなんて一度もないんですが……。

「ちょっとうっちゃん！　よそ見してないでアレを見てッッ！！」
「え、なになに――……はぁあ！？」

　数秒間モブ達の会話に気を取られていて、うっかり今世紀最大の超絶萌えシーンを見逃すところだった。
　俺の目に飛び込んできた、その驚きの光景とは……！！