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〈24〉どんどん流される永田氏
八代は安定の馬鹿力で拙者の腕ごと強く抱きしめているから、抵抗など一つもできない。足場も段差で安定してないから、蹴ることも不可能だ。
八代はそんな拙者にお構い無しで、角度を変えながら何度も何度もキスしてきた。たまに唇を舐められたり吸われたりして、そのたびに背中から何かがヒュッと抜けていく感覚がする。あ、背骨じゃないでござる。(小ボケ)
「ンッ! ンンーッ!!」
こ、こいつ、同じ高校生のくせにこんなエロいキス……ッッ!! い、イケメンだから慣れてるのか!? つうかマジで誰か止めろぉぉ!!
でないとなんかッッ……拙者の意志に反して身体がなんかいう事を聞かなくなりそうで……!!
「本気だって分かってくれるまで、何回もキスするよ」
「なっ……ンンッ!! はぁっ、ヤメ、」
「永田くん好きだよ、ホントに好き」
「ぷはぁっ、ンンーッ!」
おいっ! ……おいっ!! 八代ぉぉ!!
「チュッ、チュッ……はあ、永田くん可愛いな……止められないや」
「おいシュート、一応突っ込むけどキスやめないと永田くんの答える隙が無くないか?」
そう! それぇぇ!! よくぞ突っ込んでくれた千歳シンジ!!
拙者、貴様のことが少しだけ好きになったでござるよぉぉ!!
「あ、そっか。ごめんね」
「ぷはーっ!! ハァッ、ハァッ! こ、殺す気か貴様……!!」
千歳シンジの的確なツッコミにて、やっと拙者は八代のディープキスから解放された。酸欠で死ぬかと思った……。クソ腐女子とクソ腐男子は止めようともしねーで動画撮ってやがるし!! あとでシメてやる!!
「それで永田くん、俺の気持ちが真剣だってこと、いい加減分かってくれたかな……?」
「……わ……」
「わ?」
「分かるかボケェェ!! いや分かったけど、分かったところで両想いになった気になるな!! このセクハラ野郎ぉぉ!!」
拙者は叫んだ。顔を真っ赤にして、腹の底から叫んだ。カラオケでも出したことのない声量だった。
「ええーっ!?」
「ははっ、確かに~」
そして拙者は千歳シンジから強引にメガネを取り返すと、全速力でそこから逃げた。階段の途中にはスマホを構えた腐女子と腐男子の姿があった。
ええい、全員どけぇ!! 邪魔でござる!!
「もう永田氏! いいところでフレームアウトしないでよぉ!」
「八代先輩、早く永田氏を捕まえてください~! あいつめっちゃ足遅いから余裕ですよぉ!」
「足が遅いは余計だ――!!」
ああ、分かりたくなかった。奴の本当の気持ちなんか……。
そして、奴とのキスがそんなに嫌じゃなかった、自分の気持ちも。
「拙者はホモじゃないでござるぅぅ―――!!」
ガシッ!
「おわっ!?」
何故か拙者は、再び八代に前方から捕まえられていた。え、なんで八代は拙者の前にいるんでござるか? 瞬間移動したでござるか?? 拙者の足が遅すぎて、いつの間にか追い越されてたでござるか? そんな漫画みたいなことがあるかぁ!?!?
どうやら八代は、階段の手すりを飛び越えて拙者の前に飛び降りたらしかった。いくら運動神経抜群のサッカー部所属だとしても……
「あ、危ねー奴でござるなぁ! 怪我したらどうすっ……」
「永田くん、捕まえた」
至近距離で、しかも笑顔でそんなことを言われて、突然心臓からぎゅんっという変な音が聴こえた。
は? なんだ今のぎゅんって……。
「くそッ、いい加減しつこいぞ貴様! 離せぇぇ!!」
「いやだよ、だって離したらまた逃げるでしょ?」
「当たり前だ――!!」
逃げないという選択肢は無いでござろう、どう考えても!!
「俺、もっと永田くんと話したいよ。さっきは無理矢理キスしてごめんね」
「……っ」
いきなりそんな殊勝な態度を取られたら、許さないといけないような気になるだろうが……! いやいや騙されるな。拙者のファーストキスなんか全然重くないけど、セクハラは許したらダメでござる!!
実はそこまで嫌じゃなかったとか、ちょっと気持ちよかったとか、そんなの絶対にありえねぇからぁぁ……!!
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