あの日、君と見た夕暮れに

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……幼かった小学生の頃が過ぎ思春期に差しかかると、ミキちゃんとはあまり話さないようにもなった。 けれど一度だけ、中学校からの帰りに、彼女と鉢合わせたことがあった。 「あっ、コウ君、久しぶり。今帰り?」 「うん、ミキちゃんも今から?」 「そう、これから帰るとこ。ねぇコウ君、久々にいっしょに帰ろうか?」 「そうだね……いっしょに、帰ろうか」 "いっしょに"という一言が、やけに胸をついて疼く。 お互いの乗っていた自転車を押しながら、日暮れの道をミキちゃんと並んで歩いた。 「そういえば、昔やっぱりこんな時間に帰ったことがなかった?」 ふと思い出したように口にするミキちゃんに、 「ああ、小学生の頃だね。赤トンボが飛んでて……」 と、彼女があの日を憶えていてくれたことを、ちょっと嬉しくも感じながら答えた。 「そう、赤トンボ……飛んでたよね?」 かつてと少しも変わらない笑顔が向けられて、刹那にドキリとする。 赤くなる顔を隠そうと空を振り仰ぐと、また一匹のアキアカネが飛んでいた。 「……あっ、赤トンボ!」 気づいた彼女が指を差して、 「ねぇ、追いかけてみようよ?」 自転車に跨ると、まるであの日と同じように、あぜ道を勢いよくペダルを漕ぎ出して行った──。
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