あの日、君と見た夕暮れに

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──やがてミキちゃんは、念願通りに高校に合格し、希望に胸を膨らませて東京へと出て行った。 僕は先行きも定まらないまま地元の高校に入り、エスカレーター式に大学へ上がった。 彼女は大学も東京に行き、地元に帰ってくるようなこともほとんどなくなり、交流は途絶えて数年が過ぎ去った──。 彼女と会えることなく大学を卒業した僕は、上京という人生で初めての大きな決心をした。 東京で就職したという彼女にもしかしたらまた会えるかもしれないという、たらればのささやかな期待を抱いて……。 けれども、ずっと地方の狭いコミュニティーで暮らしていた僕は、都会の広さと人の多さを知らず、簡単に彼女と再会などできるはずもなく、大した資格もない自分を受け入れてくれたのは工場の生産ラインぐらいで、作業に忙殺されるだけの日々が続いた。 職場で親しい友達も出来ず、仕事を終え灯りの消えた侘しい一人暮らしの部屋に疲れて帰ると、思い出されるのは彼女のことばかりだった……。
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