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2月15日/水無瀬第6日目
後鳥羽はその日一日、常に実朝を侍らせた。侍らせているだけではない。隣にいる実朝の肩や腰を抱き寄せて、しばしば体を密着させている。
かなり親密な二人の様子に、(ははぁ、あの若者も気に入られて上皇様から情けを受けたのだな)と周囲の者は思っても、水無瀬ではよくある光景なのか、誰も好奇の目を向けることはなかった。
――ただ一人、泰時を除いては。
後鳥羽が所用で中座した隙を見計らって、ようやく泰時は実朝と話すことができた。
「サネ様、その…お身体は辛くはないですか?」
遠回しの心配に対して、実朝はやんわりと答えた。
「大丈夫。上皇様は優しくしてくださるから」
「こんな…こんなことが父や伯母に知られたら…」
「ヤスは、見ざる聞かざる言わざるでいればいいよ」
かえって当の本人が平然としている様子に、泰時は憮然とする。内気で純情な実朝に対して、後鳥羽は一体何ということをしでかしてくれたのだ。
後鳥羽が何事にも精力的に取り組む性質なのはわかるが、よりによって鎌倉の征夷大将軍に手を出すとは…よほどの好き者か、鎌倉殿を身体で従属させようと企む策士なのか…あるいはその両方なのだろうか。
もともと後鳥羽にはいい印象がなかったし、それは先方も同じだろう。
だが、この時、泰時の中で後鳥羽に対する反感がむくむくと膨れ上がった。
泰時は心中密かに思った。
今までは、強いて感情を押さえつけてきたが、後鳥羽から受けた所業の数々を自分は一生忘れまい…と。
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