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「夏村、お前の所、前期と比べたらいま一つ売上が伸びてないな?
他の奴もそうだが、夏村の所が一番それが顕著だ」
朝一、課のミーティングでの前田課長のその言葉に、うっ、と思う。
きっと、言われるだろうとは思っていたけど。
半月に一度、同じフロアの小会議室で、課のメンバー10人でこうやって集まる。
「最近、同じような格安居酒屋がこの辺りで相次いでオープンしていて」
私は用意していた言い訳をする。
関西でそこそこ有名な居酒屋チェーン店が、
この辺りに進出し始めた。
「まあ、それはあるだろう。
売上が伸びないのは、夏村に限らないから。
でも、同じ条件でも、神田は前期と変わらず、
冬野は前期の売上を超えそうだ」
そう言われても。
私なりに、努力はしている。
その店舗の店長やエリアマネージャーとミーティングして、
色々と売上を上げる話し合いもしている。
アルバイトの人数を増やしてみたり、
その店舗限定のメニューを考案してみたり。
「これから、年末年始で、いわばうちの業界は稼ぎ時。
夏村、この期間に巻き返してみろ!お前なら出来る!」
そう前田課長に鼓舞され、はい、と返事はしてみた。
年齢的には一回りくらいしか離れていないが、私から見て父親キャラの前田課長。
わりと、私はこの人を上司として慕っているから、仕事面で認められたい。
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