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その勝負をきっかけに、私は気持ちを入れ換え、ひたすら仕事に打ち込んだ。 年末らしくお得な忘年会プランを出し、担当店舗のエリアマネージャー達と会議を重ねて、色々練って。 女性客が喜ぶように、商品開発の課に掛け合い、担当店舗限定でオリジナルスイーツを企画して出したり。 そのかいあって、担当店舗の12月後半の売り上げは、前年の同月よりも良かった。 なのに、冬野は私よりもさらに売り上げを伸ばしていた。 結果は、冬野の勝ち。 冬野は、忘年会プラン限定での飲み放題食べ放題のオーダーバイキングをしたり、 今一度店内の配置を見直し、テーブル数を増やしたり、 従来のカウンターだけではなく、一人専用席を増やしてお得なお一人様プランをしたり、あの手この手で、冬野の圧勝だった。 「冬野、社長賞だってね?」 新年早々、冬野は朝から社長室に呼ばれていた。 前田課長の話では、近いうちにうちの会社で新たな飲食ビジネスを始めるらしく、そのプロジェクトの中心に冬野が抜擢されるのではないか?と。 そうなると。冬野は営業ではなく、企画部に移動だろうか? それは、寂しいな。 なんだかんだ、5年近くこうやって同じ課でお隣さんだから。 「それより、俺との勝負覚えているよな?」 「ああ、それね。覚えてる。 私の負けだね。 ちょっと腑抜けてたから、いい刺激になった。 ありがとう」 そう笑顔を向けるけど、冬野は笑顔を返して来るどころか、ちょっと難しい顔で私を見ている。 何? 「お前、今回の勝負って、ただ勝ち負けだけなわけないだろ?」   「え?そうなの?」 え、金銭とか要求されるの? でも、それなら勝負を持ち掛けて来た時点でそれを言うのが筋じゃないの? 「いい店見付けたんだよ。 今夜、どう?」 それって、勝負の負けた私に夕飯を奢れって事? 「いいよ。仕方ない」 まあ、私が負けたのなら仕方ないか。 その店があまり高くない事を祈る。
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