1

8/20
前へ
/96ページ
次へ
とりあえずの生中で乾杯して暫くすると、テーブルの上には沢山の料理が並んで行く。 一番初めに、ローストビーフに箸をつけた。 専用のタレが入った小皿に、洋風わさびを溶かして、霜の降るお肉を口に運ぶ。 それは、口の中で溶けるように解れて行く。 「私、こんな霜の降ったローストビーフ初めて食べた」  赤身のローストビーフとはまた違い、とてもジューシー。 「実は、俺も今日初めて来た店なんだけど。 この店、社長のオススメで、特にローストビーフが絶品だって」 冬野もローストビーフを口に運んで、満足そうに頷いている。 いい店を見付けたとか言うから、何度か冬野は来ているお店かと思ったけど。 そうじゃないのか。 そういえば、冬野はうちの社長とそこそこ仲が良いと前に言っていたな。 冬野と社長はゲーム仲間らしい。 「このローストビーフ、一切れで三千円くらいするんだろうな?」 そう、ポツリと溢された冬野の言葉に、ドキっとする。 一皿じゃなく、一切れが三千円? 「え、このお店そんなに高いの?!」 財布の中、1万5千円くらいしか入ってないのもそうだけど、 いくら勝負に負けたからって、そんなに奢れない! 「ズバ抜けて高いのは、このローストビーフだけだから心配すんなって」 冬野はそう言うけど、このローストビーフだけで予算オーバーじゃないだろうか?
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1464人が本棚に入れています
本棚に追加