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凍えるようなビル風が私の体に吹きつける。通勤ラッシュのオフィス街はどこを見ても人だらけなのに、身も心も冷え切っていった。ネットで一目惚れして買ったチャコールグレーのコートでも、厚手のマフラーでさえ、白波のように引いていく体温を守ってはくれなかった。
ふいに白い息の向こうにあなたを見つけた。灰色のビルに入っていく細身のコートを着た後ろ姿はまるでスポットライトを浴びているかのようで、あなたのまとう空気は輝いて見えた。
風になりたいと思った。ただ通り過ぎて、あなたの体温を奪う、乾いた風。一瞬でもあなたに触れることができたなら。
淡い願いを振り払う。熱せられてどろどろに溶けた鉄のような心を抱えながら、素っ気ないビルへと足を運んだ。
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