プロポーズ日和

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 昨年の夏にローンを組んで買った愛車のハンドルを握り、俺は夜のハイウェイを走っていた。 ハイウェイなどと横文字で気取っている辺り、相応にテンションは上がっている。 そして、正しく言えば高速道路(エクスプレスウェイ)であって、幹線道路(ハイウェイ)ではない。 だってさ、馴染みのあるのはそっちだから、別にそれでいいじゃん? そう、要はテンションの問題なのだ。 独りツッコミ、独りノリを済ませ、俺はスピード超過気味だったアクセルを緩めた。 「ふぅ……」 落ち着け、俺。 言い聞かせて息を吐く。 それでもドキドキと高鳴る心音は無視できない。 そうと言うのも、俺は今日、四年越しでつき合っている彼女に、プロポーズすると決めたのだ。 今日という日に別に意味は無い。 結婚すれば結婚記念日と言うけれど、プロポーズ記念日などと言う少々噛み合わせの悪い語呂は聞かない。 俺、多分、この子と結婚するんだろうなぁ。 なんてほどのことは思うところはあっても、これまで実行に移そうとまで思わなかった。 そうこうしているうちに彼女の方が転勤になり、俺と彼女は遠距離恋愛に突入して二年を経ていた。 「たかだか400㎞の距離なんて、会おうと思えばすぐだよ」 そんな言葉で、俺は彼女の栄典とも言える転勤におめでとうを言って、送り出していた。 彼女は少しばかり顔を曇らせ、『それでいいんだ』と、ポツリと零しただけだった。  最初の頃は、慣れない土地、慣れない環境にてんやわんやの状態だったみたいだけれど、今では随分と落ち着きを取り戻したようで、仕事は順調だと聞いていた。 まぁ、そんなことは軽く想定内だった。 彼女は責任感強く、そして有能だとは周知の事実。 そしてその人当たりも悪いところを俺は知らない。 流石、俺の彼女なだけあるよ、うん、うん、などと惚気ておきたい。 「……」 俺の精一杯の強がりだった。
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