第一章 なあ、俺と契約を交わせ

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そのうち、何も言わずに姿を消す。 その繰り返しだ。 そんな矢先、足首の骨折で運ばれて来た患者がいた。 鶴巻梨花 三十九歳だ。 骨折して歩けないのにその患者は大丈夫と診察を拒否した。 「私、自力で治しますから治療はしないでください」 そう言って、緊急処置室のベッドから立ち上がろうとした。 「痛い」 「当たり前だ、骨が折れてるのに立ち上がれるわけがないだろう」 「大丈夫です」 俺はその患者の言葉を無視して、診察を始めた。 「CT検査室に運んで」 その女の抵抗も虚しく、CT検査室に運んだ。 「家族の連絡先を教えろ」 「私は一人暮らしなので家族はいません」 「そうか、じゃあ、お前に話する、しっかり聞けよ」 何、この先生、お前とか、聞けよとか、なんで命令口調なの。 「骨折してるから、入院して手術だな」 「私は自然治癒で治します、骨は勝手にくっつくし……」
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