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小学六年生の時に生理が始まった。下着に真っ赤な血がべったりくっついているのを見て、嫌悪感を感じた。母親に報告したら夕飯は急遽赤飯になった。両親は大人になったことを喜んでくれていたけれど、俺はそうは思わなかった。
中学一年生の時に体の変化に敏感になり始めた。段々と膨らむ胸、そして柔らかな曲線を描く体。そんな「女らしい」体になり始めている自分に嫌悪感しかなかった。女という性別に対しての明らかな拒絶だった。
周りがブラジャーを着けはじめたり、胸を大きく育てようと頑張ったりしている中、俺だけはさらしを巻いて胸を潰した。生理が来て死ぬほどお腹が痛くなる度に、女という性別を突きつけられているような気がして吐き気がした。「麻里ちゃん」と呼ばれる度に苛ついた。可愛いよりもカッコいいと褒められる方が嬉しかった。俺は男なのに、という気持ちが段々と強くなっていった。
これを人は性同一性障害というらしい。最初その単語を知った時、障害って何だよって思った。障害じゃねーし、って。思わず障害の意味をスマートフォンで調べた。もしかしたら俺が知っている以外の意味があるのかもしれないと信じて。
障害とは妨げる事、またあることをするのに妨げになるものや状況。個人的な原因や社会的な環境により、心や身体上の機能が十分に働かず、活動に制限があること。(デジタル大辞泉より)
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