いや、俺

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 この定義を読んだ時、納得した。俺は女という性別で生まれてきたから、心が男でも当然トイレは男子トイレではなく、女子トイレに行く。着替えるのも女子更衣室だし、生理だって来る。胸だって膨らむし、いずれ妊娠だってする。制服はズボンじゃなくてスカートだし、社会人になったらマナーとして化粧を強要される。  確かに、これは障害なのかもしれないと納得した。活動に制限がある。性同一性障害という名称は俺を表すのにピッタリなのかもしれない。  男になりたいと両親に言ったら、両親は一体どんな顔をするだろうか。多分、顔を引き攣らせるだろうな。  今は多様性だからか何だかわからないけど、LGBTQであったり、個性であったりと人々が昔よりもオープンになれる時代になってきている。でもまだそれは全体に滲透している訳じゃない。ゲイを受け入れてくれる人もいれば、ゲイに嫌悪感を抱く人もいる。だから体は女なのに心は男である俺のような人間も、受け入れてくれるかもしれないしそうじゃないかもしれない。  世の中って生きづらいなぁ、とつくづく実感する。昔よりは生きやすいのかもしれないけど、俺にはまだ生きづらく感じる。  俺にはまだ自分のことを告白する自信が無い。周りの反応が気になるから。どう思われるのか、もしかしたら嫌われてしまうのではないかと思ってしまうから。自信さえあったら、この世の中を生きやすいと感じるようになるだろうか。多分、今の俺には無理だ。 「それじゃあ、次ー」 「はいっ!」
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