いや、俺

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「で、反らした」 「ごめん……」  俺がずっと気がかりだったことを謝ると、小森がけらけら笑った。明るい様子にホッとする。 「いいって、いいって。慣れてるし。そりゃ、ビックリするっしょ。私だって突然体は男だけど、心は女です~なんて言う人が目の前に現れたらビックリするもん」  小森がブランコを漕ぎ始める。俺はブランコを漕ぐ小森を見て、靡く髪の長さに長い間髪を伸ばしているんだなと思った。 「小森はさ、いつからそう思うようになったの?」  俺の質問に小森が漕ぐのを止める。小森は「んー」と考えてから「中二かな?」と言った。 「何か、『あれ?』って思ったんだよね。昔から可愛いものが好きだったんだけど、それだけに留まらなくなったっていうか。  私にはお姉ちゃんがいるんだけど。お姉ちゃんが化粧しているのを見て、いいなぁって思うようになってて。化粧して、可愛いワンピースとか着るお姉ちゃん、いいなぁって。そしたらお姉ちゃんが『化粧してみる?』って言って、化粧してくれて。それで思ったんだよね。あ、私女の子になりたいんだって。そこから髪も伸ばし始めたの」  中学二年生って最近なのに、こうもオープンにできるなんて。俺なんて中二よりも前から男になりたいと思うようになったのに、未だに告白することさえもできていないんだから。 「……何でそんなにオープンになれんの?」 「え?」 「普通、怖いでしょ。受け入れてくれる人も世の中にはいるかもしんないけど、そうじゃない人だっている。周りからの反応とか怖くないの? 親とかさ」
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