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ああ、落ちつかない。
だめだ、落ちつけ。
いや、落ちつけなくてもしょうがない。
今日は人生で一度しかない、特別な一日なのだから。
未婚率が上がり、少子化が問題視された日本で、国家はとある制度を導入した。
その名も、国家所有のAI『アカイイト』によるマツチングサービスだ。22歳から29歳の全国の独身の男女から、『アカイイト』が相性がよいと判断した者をお見合いさせるというものだ。
この『アカイイト』サービスの特徴は、一人につき一回しかお見合いのチャンスがないこと。そしてお見合いが行われる時期が人によって違うことだ。22歳から29歳のどこかのタイミングで国家から「あなたにぴったりの相手が見つかりました」と書状がやってくる。もちろん気乗りしなかったら断っても構わないが、一度断るともう利用の権利はなくなってしまう。
僕の元に書状がやってきたのは、30歳の誕生日の三日前。
やっぱり、AIでも僕に合う女性なんて見つけられなかったのかな?『アカイイト』サービスなんて都市伝説だったのかな?と思って諦めていたタイミングだった。
お見合い日は、29歳最後の日。
ギリギリすぎる。このサービスのお見合い相手として最年長になってしまうけれど、大丈夫だろうか。ちょっと不安だ。しかし、会社も快く有給をくれたし、彼女ももう何年もいない。このまま寂しく30歳を迎えるぐらいなら、一度のチャンスぐらい使ったほうがいいじゃないか。そう思いお見合いを決めた。
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