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それから何日かしたあと、タイガから「別れよう」と連絡が来たっきりブロックされた。
アタシは休み時間中も教室でタイガとの思い出に浸っていた。ハグしながら撮った写真に目が潤む。
「大丈夫だって。莉子ならもっと良いカレシできるって」
机に突っ伏すアタシを囲んでいる友だちが口々に言った。
「終わった人生。ろくな奴いない絶対」
スマホを切り、頭を隠しさらに縮こまる。その上から今はそっとしておこう、と声がして離れていく。自分から離れていく人間から背けるように目をつむろうとしたそのとき、
「ちょっと前見て歩きなさいよ」
友だちの声がして顔を上げると、彼女たちの前に横幅が倍ある女子が立っていた。ごめんなさい、と下げる頭はくせ毛で横に広がり、メガネの奥の瞳は細い。
あの人は確か、ブーコだっけ。なんとかすれ違いながら、こちらへと歩いてくる。よく見ると手には一枚の紙を持っていた。
ブーコはアタシの隣に座ると、その紙を見始めた。のけぞるようにして、紙を見るとそれは手紙だった。
『・・・・・・約束の日までもう少し。会えるのを楽しみにしている。愛しているよ、風子』
ストレートな愛情表現の手紙に、口元を上げるブーコ。ムカつく。アタシは誰にもこんな手紙書いてもらったことないのに。
てか、なんでアタシがフラれて、こんなブスにカレシがいるのよ。苛立ちからスマホを握る力も歯を食いしばる力が強くなる。
そのとき、アタシの視線に気づいたのか、ブーコが振り返った。どうしたの、と顔が明らかに曇っている、というか困っている。
「いや、別に」
アタシは肘をつき、咄嗟に反対の方を向いた。ブーコもそうなの、と再び手紙に視線を戻す。日頃から雑に扱われるのは慣れてそうだった。
私には愛してくれる人がいるから、いくら変なことされても平気、みたいな。
頭を抱えた末に出てきたのは、めちゃくちゃにしてやりたいという願望だった。フラれたアタシの前でのろけたこと、後悔させてやる。
手始めに、約束の日とか情報を探らないと。今度はバレないようにブーコの様子を窺った。目についたのは机にかかっているブーコのカバンだった。カバンに一つだけバッジがついている。アタシは握っていたスマホでバッジについて調べ始めた。
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