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4
ブーコと会話し始めて、それなりの時間が過ぎた。休み時間に彼女の元へ行けば、手紙を書いていた。
「また手紙書いてるの? スマホ使えばすぐなのに」
「そうなんだけど、彼はスマートフォン持っていないから。それに書くの楽しいし」
一通り書き終えると、ブーコはカバンから小さい箱を取り出す。中にはスタンプといくつかの四角い欠片、ライター、スプーンが入っていた。
「なにこれ」
「シーリングスタンプっていうの。この四角いのは蝋で」
彼女は蝋を一つスプーンに乗せ、下からライターで炙る。すると、蝋は溶け出し液体のようになった。
その液体を閉じ口部分へ垂らすと、徐々に硬貨くらいの大きさの円になった。
まるで中世ファンタジーのような場面にクラスメイトの視線を集める。それでも、ブーコは臆することなくシーリングスタンプを蝋の上に押した。
持ち上げると、紋章が浮かび上がる。中央には雷みたいなギザギザが彫られていた。
「なんていうか、オシャレだね。手間かかりそうだけど」
「確かに。でも、このシーリングスタンプを使えば、住所とか書かなくても届けてくれるみたいなの」
彼女は他にも説明してくれていたようだが、アタシの視線にはシーリングスタンプしか入ってなかった。
この紋章を見ればどこ宛てが分かるってことは実はすごく有名な人なのかな。そんなことを考えていると、ふとブーコが時計を見る。
「教室移動するからちょっと準備するね」
シーリングスタンプと一式をカバンに入れると、その場から立ち上がった。なんとか机の間を移動しブーコは教室を出た。
アタシは周りを見回すと、ブーコのカバンへ近寄る。素知らぬ顔で手を入れ、箱に手を伸ばす。その箱も探ると、あの特徴的なくびれを見つける。
カバンから手を抜くと、求めていたシーリングスタンプを手にしていた。
これで、ブーコとカレシの仲を引き裂いてやるんだから。アタシは声を押し殺しながら笑っていた。
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