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 夜中、誰もいないリビングで紙を広げ、手紙を書く。 『元気ですか? わたしは元気だよ。  この前は手紙ありがとう。よんでとってもカンドーした  それで、話かわるんだけど、わたし用事ができて約束の日に会えなくなっちゃって』  ペンを走らせるが、なんだかしっくり来ない。ブーコはこんなこと書かないような気がする。  もっと学校とか今の状況とか書いてそうだし、本題に入るの早すぎるし。  『かみくに』のことでも書いてみるか、とページをペラペラめくる。  最初はイケメンありきの漫画かと思ったけど、意外と面白い。でも、漫画については書かないか。  それ以前にこんな丸文字じゃなかったし。別のメモ用紙に文字を書いてみようとする。  でも、はらいや角を気にしてなかったせいで、かえって下手になった。  なんかバレないように気を使うのもバカらしくなってきて、会えないことだけ伝える文面を書き終えると、便せんを封筒の中に入れる。  あとはこのスタンプを押せばいいけど、蝋がない。アタシはリビングを見回して、母のアロマキャンドルを持ってくる。それをライターで炙った。なんとか閉じ口の下に垂らしていく。なんかブーコが垂らしていた蝋より薄いしか水っぽい。あと、変な匂いがする。違和感を覚えながらも垂らした蝋の上にシーリングスタンプを押す。平たくて薄い紋章が浮かび上がった。  これをポストに出せば終わる。郵便ポストは家を出てすぐのところにあるはずなのに、どうしても動き出せない。  改めて手紙を見る。便せんに書く文章を考えて、閉じ口に蝋を垂らして、ブーコはよくこんな凝ったこと毎度やるよね。  頭に浮かんだのは、手紙を書いたり彼について話したりする彼女。  アタシがタイガと付き合ってたときよりずっと寂しい状況なのに、それを壊したところで意味あるのかな。  封筒を出す気力がなくなり、アタシはその手紙を置き去りにして自室のベッドに寝転んだ。
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