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  数年後、大学の教室から見える桜の木はすっかり緑の葉をつけていた。  昼食時、学生たちが雑談をする中でアタシはフーコに手紙を書いている。 『フーコへ 向こうの世界の暮らしはどうですか?  信じられないかもしれないけど、アタシ今彼氏いないの。  はじめはどうやって生きていくのか不安だったけど、案外平気なもんなんだね。  大学の勉強とかバイトとか、大変だけど楽しくて。今まで気づかなかったのが不思議なくらい。  これもフーコのおかげかもね。本当にありがとう! また手紙書くね』  便せんを前に掲げ、目を凝らして見る。初めてにしては上出来じゃないかな。確認し終えると、便せんを折り封筒に入れる。あとは、とカバンからシーリングワックスのセットを取り出した。蝋をスプーンに乗せ、下からライターで炙る。蝋が溶けたら閉じ口部分へ円になるように垂らした。案の定、不思議がってチラッと見てくる学生もいたが、その視線はもう気にならない。最後にシーリングスタンプを押し、持ち上げると紋章が浮かび上がった。  手紙の完成にホッとするとしたと同時に期待から胸が膨らむ。この手紙を読んだらフーコはどんな反応するのかな。フーコはどんなことを知らせてくれるのかな。アタシは席を立つと、跳ねるように教室を出た。ポストを探す足取りは軽かった。    おわり
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