12月32日

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「犀川さん、転校するんだって」 それは当然のことだった。 「それもうんと遠く、九州の学校なんだって」 胸にすっぽりと大きな穴が空いたような、そんな気がした。 1月の学校が始まるころには、九州の学校に引っ越してしまう。そんなことがわかっても、ことねと二人で話すこともできなくなっていた。 恥ずかしさを引きずりながら、31日まで来てしまったからだ。 来年の4日か5日に、ことねは引っ越してしまう。 やり残したことがあるとすれば、ことねのことだった。ことねへの想いが32日を生んだのだとしたら、僕は……。 「ことね!」 久しぶりにことねの家のインターフォンを押す。 これでことねは未練が眠っていたらなんて、考えてられる暇はなかった。それはそれでいいじゃないか。 しばらくするとことねが、玄関のドアをあけた。随分と長い間、顔を見ていなかった気がした。
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