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「犀川さん、転校するんだって」
それは当然のことだった。
「それもうんと遠く、九州の学校なんだって」
胸にすっぽりと大きな穴が空いたような、そんな気がした。
1月の学校が始まるころには、九州の学校に引っ越してしまう。そんなことがわかっても、ことねと二人で話すこともできなくなっていた。
恥ずかしさを引きずりながら、31日まで来てしまったからだ。
来年の4日か5日に、ことねは引っ越してしまう。
やり残したことがあるとすれば、ことねのことだった。ことねへの想いが32日を生んだのだとしたら、僕は……。
「ことね!」
久しぶりにことねの家のインターフォンを押す。
これでことねは未練が眠っていたらなんて、考えてられる暇はなかった。それはそれでいいじゃないか。
しばらくするとことねが、玄関のドアをあけた。随分と長い間、顔を見ていなかった気がした。
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