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母、加奈子
「母さん、手伝いが必要なら僕が手伝うよ」
ああ、陽輝はなんていい子に育ったんだろう。
「あら、陽輝はいいの! 学校と部活で疲れてるでしょ? ご飯が出来たら呼ぶから待ってて」
それに比べて咲希ときたら。女の子なのに、こちらが言わないと手伝いもしないのだから。
「お皿、並べたらいい?」
咲希は、食器棚の扉を開けて、白地に紺の花柄の和皿を取り出していた。
「違うでしょっ! 唐揚げを載せるんだから、もっと大きいお皿にしてちょうだい。そっちの白いお皿!」
何も言わず、その大きな目でこちらをじっと見る咲希。咎めるような視線に一瞬言葉をなくす。
「…っ、いいから早く出して!」
本当はお皿なんてどちらでも良かった。自分でも分かっているが、咲希を目の前にするとどうにも感情が先走る。イライラするのだ。ただ咲希が咲希だというだけで。あの日から…
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