真、大学一年生

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真、大学一年生

 久しぶりに訪れた三軒隣の陽輝の家、インターホンに対応して出てきてくれた陽輝のお母さんは、泣いているような笑っているような、どこか複雑な表情だった。 「(しん)くん、よく来てくれたわ。いつも本当にありがとうね」 「いえ、そんな別に…」  何と返事をしていいのか、毎回言葉に困る。迷惑かとも思いつつ、毎月十七日に陽輝の家を訪れるのは、僕なりの贖罪なのだから。  陽輝のお母さんは、この一年がまるで十年も二十年も過ぎたかの様に、様相が変わった。 「嬉しいのよ、本当に。陽輝の事を忘れずにいてくれて…ありがとう」  仏壇の横に置かれた二枚の写真。並んだ二人は笑顔が良く似ている。だけど、幼馴染の顔を見つめても、もう視線が絡むことはない。  そっと手を合わせて目を閉じる。陽輝の居ない家は必要以上に静かで、自分の呼吸や鼓動が響くような気がした。  高校三年生の春、陽輝と二人もつれるようにじゃれ合いながら渡った横断歩道。後ろからまわされた陽輝の腕の中、しっかり蓋をしていたはずの、秘密の箱が開いてしまうと焦った。  陽輝じゃなければ、陽輝が居なければ……僕はで居られるはずなのに。きっと神様は僕のあさはかな願いを取り違えてしまったんだ。病院で目が覚めた時には、この世に陽輝は存在しなくなっていた。  居眠り運転のトラックが突っ込んで来たあの一瞬、僕が躊躇わなければ、二人ともどうにか避けることが出来たんじゃないのか。何度も繰り返しあの一瞬を思い返す。陽輝が死んでしまったのは、今もであり続ける、僕への罰なのかもしれない。  
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