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「馬鹿な男。私を誘っておけばあんな映画を観ることもなかったのに……」  佳世は読み終わった本をポンとテーブルに置いた。タイトルは『ミステリーナイト』。あの映画の原作だ。主人公の男は会社員で、ランチでよく訪れる蕎麦屋の女性店員と不倫をしている。やがて男は妻に女の存在がバレて離婚される。他人のものでなくなった男に興味が失せた女は、あっさりと男を捨てる。 「そうか。二人は最後まで映画を観ていないから、結末を知らないのよね」  佳世はほくそ笑んだ。ラストは、ストーカーと化した男が女を殺めるのだ。 一方、妻の方はというと、慰謝料としてもらったマンションで幸せに暮らす。勿論一人ではない。眼鏡をかけた背の高い男と一緒だ。                      
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