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川沿いの土手で立ち尽くし、いつのまにか通り雨は本降りの雨に変わって、週間予報はしばらく雨マーク。
雨音に混じって、スマホが軽快な音を鳴らした。
【菜花】
裕君に告白できた!
なんと、なんと、うまくいったよ~
信じられない!
ハルちゃんありがとう!!
歪んで表示されたメッセージは読みづらい。画面に落ちた水滴は、なかなか止まない雨のせいだ。
私はとびきり笑顔のスタンプを押して、スマホを鞄に仕舞った。
まだ雨は降り注ぐけれど、私はそのうち元通りに、完璧な私に戻れる。
……でも今はもう少し、この雨の下で濡れていたい。根腐れしそうな私の花に、君が気づいて傘を差してくれたらいいのに。
川は、雨粒の波紋で一面埋め尽くされている。
私は辺りを見回し、誰もいないことを確認してから、すうと息を吸い込んだ。
「菜花の莫迦――!」
土手の鳥が飛び立つ。
「ちょっとは気づけ――! この鈍感――!」
喉が焼ける。
涙が止まらない。
でも、心はどんどん軽くなる。
「好きだ――――!」
今日は初恋が終わった日。
そして恋の花を咲かせたばかりの君を見守る、親友としての一日目。
大丈夫、私はきっと、大丈夫になれる。だけど諦めるつもりはない。たった一度の失恋くらい、積み重ねた「好き」と比べたら雨粒より小さいんだから。
今度は、私が変わる番。いつか自信を持って、君に想いを伝えられるように。
I will be right as rain.
空に晴れ間がのぞき、河面にきらきらと反射した。
これだから、天気予報は当てにならない。
了
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