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最初の目的地はショッピングモール。ファッションセンスに自信が持てないという菜花のために、私が買い物に付き合う予定。
「これなんか、どう?」と襟付きの上品なワンピースを菜花に当てる。
「うーん。ちょっと地味かなぁ」
鏡を見て、彼女は首を捻った。私に選んでと言っておきながら、ちゃっかり文句は言うのだから。
まあ、付き合いが長い故の気軽さだと思えば悪い気はしない。
「ね、ハルちゃん。あれは?」
菜花が指差したのは、フリルのついた水玉のミニスカート。
「えっ。た、丈が短すぎない?」
「陰キャから脱却するために、洋服一式を調達に来たんだもん。これまでとは違う服を選ばなきゃ」
私としては露出は控えて欲しいのだけど……菜花の背中を押すためだ。決意を尊重しよう。
「はいはい。そのスカートに合わせるなら、トップスはこれくらいシンプルにしなさい」
「わっ。さすがファッションリーダーのアドバイス、助かる!」
「誰がファッションリーダーだっ」
私だってインスタのアカウントを参考にし、ファッション雑誌も買って、研究し尽くした……というのは秘密。
それにしても、こうして試着室の外で待っていたら、買い物デートに付き合わされた恋人っぽくない?
「コーディネートを選んで差し上げるなんて、お優しいですね。お二人は姉妹ですか? お友達ですか?」とにこやかに店員が尋ねる。
「……友達です」
答えながら、内心がっかりした。
ま、普通、そうだよね。
菜花とは小学校からの知り合いだが一度も同じクラスにならず、中学のときにお互いが図書委員になって初めてまともに言葉を交わした。
大人しい子という印象とは裏腹に案外お喋りで、好きな本を薦めるときの圧の強さは文学少女というより文学マニア。そんなギャップにみるみる惹かれた。
初恋相手が女の子だなんて、予想外だったけど。
以来、わざと帰る時間を合わせたり、敢えて傘を忘れて相合い傘をしたり、菜花が好きな作家の本を読み漁ったり、彼女と同じ高校を受験したり……我ながら恋愛脳が過ぎると思う。
「ハルちゃん……この服、どう……かな?」
「すごく似合ってる。惚れ直すね」
「またそんなこと言って。お世辞でも照れるよ!」
本気なのにな。
顔を赤くして、菜花はカーテンをさっと閉めた。
こんな私のわかりやすい恋心にまったく気づかない菜花は、たいがい鈍感が過ぎる。
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