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1. 決意のデート
今朝は目覚めバッチリ、肌の調子は万全、頭のてっぺんから爪の先まで君が褒めてくれたコーディネートで決めた、“完璧な私”。
春休みの真っ只中、会うのは五日ぶり。
待ち合わせは午後1時。
駅前の花時計が目印。
……よし。余裕を持って15分前に到着する、スケジュール管理も上出来。
天気予報は快晴だったのに、雲行きはなんだか怪しい。
「ハルちゃん!」
「菜花ったら。走らなくて良かったのに」
「あたしから誘ったのに、待たせちゃってごめんね」
「いいの。今日はしっかりエスコートさせていただきますよ」
「もうっ、ハルちゃんったら、彼氏みたい」
私は曖昧に微笑みを返す。
菜花は自分に向けられた好意に対して、とことん鈍い女の子だ。
だから私がかれこれ三年、彼女を想っていることも露知らず、そんな洒落にならない言葉を気軽に口に出来る。
彼氏みたいな女友達の立ち位置は、もう今日でおしまいだ。
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