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カティアの笑みが、さらに大きくジルを包みこむ。
「あなたもこの国、サッカムの街に恋してほしいわ。そしてわたしと、ほかのご婦人方と、一緒に街をさらに豊かに、強く、立派にしない? 職人だけでなく、もっとほかの魅力を持っているご婦人方もたくさんいると思うのよ」
まるで歌うようなカティアの声を聞きながら、ジルは改めて思った。
(やっぱりあなたは、最悪の主人です――)
ジルがずっと夢見た静謐な生活は、永遠の夢で終わりそうな気がする。
街の女たちを集めて何をやろうというのかはわからないが、ただ単にお勉強なりおしゃべりなりをして終わりになるはずがない。
王宮でカティアひとりに感じていた面倒くささの、数百倍は面倒くさいことになるだろう。
だがジルは、その面倒くささをむしろ好ましいと思った。
「――恋、することができればと思います」
ジルは小さくつぶやいた。
カティアが自信たっぷりにうなずいた。
「できるわよ」
立ち止まってずっと動かないふたりに、迎えの修道女たちがうろたえはじめている。
ジルとカティアは顔を見合わせ、微笑みながら修道院へと歩き出した。
《了》
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