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§ § §
カティアは妾腹の王女だった。
さらに悪いことに、彼女の母親は父王のさらなる寵を得るどころか早々に飽きられ、しかもカティアが十四歳のときに亡くなった。
後ろ盾のない妾腹の王女へ向ける正妃の感情はいたく冷たく、たとえばジル自身もそのひとつといえる。
――妾腹の王女の侍女には、不義の子を。
ジルの母は、侯爵家令嬢でありながらひそかに父の知れない子を生んで、その後さっさと他の侯爵家へ嫁いでいった。
残されたジルは侯爵家の末席にどうにか加えられたものの、物心つくころにはすでに、自分の微妙な立場を思い知らされるような扱いを受けていた。
服は伯母や従姉妹たちがわざと汚してよこすお下がり、食事も常にかつかつの余り物。
従姉妹たちともに家庭教師から学ぶことは許されたものの、おもな役目は、従姉妹たちが間違えたときにかわりに罰を受けること。
だから、王女付侍女にという話が来たとき、ジルは素直に喜んだ。
王宮に入り、主人となるカティアと面会したそのときまでは。
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