修道女が恋を夢見てもいいでしょう?

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(まあ完璧な幸福なんてこの世にあるわけがないにはしても……よ)  服は王宮から新品が支給され、食事も十分に満足できるものを三食。  仕事も贅沢な室内での軽作業ばかりで、肉体的な疲労は皆無。  しかも主人のカティアは周囲の男たちの品評に忙しく、ジルをいじめることなど思いつきもしない。  だが、ではこの七年間が夢見心地の幸せな時間だったか、と問われれば首をひねらざるをえない。 (わたしは男嫌いじゃありません、恋愛しか考えられない頭がお花畑の人間が嫌いなんです!)  カティアの止まらない男性称賛を聞くたびに――それはほぼ毎日だったが――自分の不幸は後先を考えずに恋に身を投じた母と父から始まった、とジルは必ず思い返した。  こういう人種は世の中からいなくなったほうがいい、と心のなかでくりかえした。  しかしカティアはそんなジルの内心などちっとも気づかないようで、飽きもせずにその日会った男の美点を片っ端から並び立てた。  ジルにとって、カティアは最悪の主人だった。
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