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ジルはカティアを強引に押しやりながら、女子修道院へとむかった。
すでに修道女たちが姿を見せて、明日からノガエラ女子修道院長となる者を迎えようとしている。
彼女たちが聞くカティアの記念すべき第一声が「かっこいい!」では、あまりにも示しがつかない。
しかもそれが自分の主人というのは、なおさらやめていただきたい。
「ねえ、ジル?」
素直に歩を進めながら、カティアがこちらを見てにんまりと微笑した。
いやな予感がする。
カティアは決して意地悪な主人ではないが、こんなふうに思わせぶりにしたり、やけに遠慮したり慎み深くしてみせたりするときには、必ずよくないことを起こす。
ジルは警戒しつつ応える。
「……なんですか? いまさらやめたいといってもだめですよ」
「あら、それはあなたもじゃない、ジル。あなたはこの七年、よく仕えてくれたわ。腹のなかはともかく、いい侍女だったと思うわよ」
カティアは、まるで天使のように無邪気に微笑んだ。
「じゃあ本題。ジルは、恋したことはあって?」
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