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「まぁ……何と呼んでも構わん。さぁやるぞ、吉良!」
メガネもない、小さくて自分勝手なきょーかしょせんせーは教科書をめくる。
(おぉ、吉良って呼ばれるの、なんか新鮮)
吉良は少しウキウキしながらせんせーの動きを目で追う。せんせーの視界に授業プリントが映った。
「はぁー。せっかく東栄が起こしてやってもねぇ」
ヒエログリフを見ながらため息をこぼす。
「いやぁ……なかなか日頃の疲れが取れなくて。もちろん、おとわんの授業は聞きたいよ。でも、部活も頑張らないといけないじゃん?部活をやるのに貴重な期間なんだよ、高三の今って」
多少の罪悪感に駆られながらもつらつらと言い訳を並べる吉良。せんせーは再びため息をついて吉良を見上げる。
「吉良も頑張ってんだなぁ。確かにこんなに部活をやれる時はもうないかもしれん。今、悔いのないようにしっかり部活もやるんだぞ!」
せんせーは初めてニコっとした笑顔を吉良に見せた。吉良に笑顔が伝染する。
「うん!分かったよ、きょーかしょせんせー!せんせーも優しいとこあるんだね!私、部活を頑張る!」
せんせーは尚も笑顔で続ける。
「部活『を』頑張るんじゃねぇよ、部活『も』頑張るんだろ!授業と家では勉強に集中してもらうからな。さぁ、吉良が寝ていた部分も解説してやっから、ついてこいよ!」
「あっ……はい……頑張ります」
ついにせんせーの授業が始まった。
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