君と僕の特別な日

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「ねえ、起きて」  君の呼ぶ声で目を覚ます。朝の日差しを背に微笑む君の笑顔が眩しくて、僕は思わず涙ぐんでいた。君は「また泣いてる」と笑いながら、僕のために珈琲とトーストを用意してくれた。トーストを焼くのに向いていない君は、今日もまた珈琲をドリップしている間に目を離し、表面を真っ黒に焦がしてしまう。それをこそげながらようやく、僕は今日を過ごす勇気を手に入れる。 「今日はどこへ行こうか?」  君は頬杖をついて首を傾げた。それから僕を指差し、曇った眼鏡を笑われる。僕はそれを無視して、この数ヶ月間毎日考えていたとっておきのプランを発表した。君は少し驚いた顔をしたあと、「そんなのでいいの?」と尋ねるけれど。僕は曖昧な顔で頷くことしかできない。  朝食を終えたら、一張羅のTシャツに着替えて街へ繰り出す。住宅街をぶらぶら歩いて、お洒落な店があればチラリと覗いて。 「こんな店できたんだ」 「ここのパン屋、潰れたの?」  君はいちいち楽しそう。そんな君を見ているだけで、僕もなんだか幸せで、それと同じくらい切ない気持ちが込み上げる。君もそんな僕を心配そうに覗き込む。 「どうしたの?」  なんでもない、と言っても許してもらえず、しつこく訳を問い質されるので、僕は仕方なく白状した。 「好きな人が隣にいるってこんなに幸せなんだって思っちゃって」  なあにそれ、と君は大口を開けて笑った。大真面目な自分が恥ずかしくなって、僕もつられて笑ってしまった。
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