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大陸全土をあげて行われる収穫祭で預言を下す先見も、言わずもがなである。
そんな中で、出身国の術士を抱える赤の都は異質だった。
大方、黒頭公は私の存在を快く思っていない。
だから、収穫祭の先見の預言を利用して私を消そうとしているのだろう。
忌々しげに私はそうつぶやく。
と、目の前に座すイリナはわずかに小首をかしげて見せた。
「一国の主が、本当にそんな理由で? 」
彼女は言外に、信じられないと言っているようだった。
けれど、私は困ったように言い返す。
「けれど、それ以外、私には思い当たるフシがない」
何度思い返してみても、私に黄帝を屠る理由は無い。
第一私は、黄帝に拝謁したことはおろか、黄帝が統べる大陸の中央に位置する黄金の都へ行ったこともない。
もっと言ってしまえば、この放逐刑が私にとっての初めての宮殿からの外出と言っても過言ではない。
そう、あんな預言さえなければ、私は宮殿から一歩も出ることなく生涯を終えていたかもしれないのだ。
外に出たいと思わないことも無かったが、こんな形になるとはな。
皮肉なものだな、と私は吐息をもらした。
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