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非力な子どもでも大人と対等に渡り合えるもの、それが魔術だったのだ。
そして幸いにも私には、その適性があった。
かくして私は、実学の発達した赤の都で数少ない術士となった。
そして、術士として父親である赤頭公に仕えることとなったのだ。
「皮肉なものだな。今まで私自身を助けてくれた力が、私の首をしめることになるなんて」
そううそぶく私に対し、イリナは首をかしげる。
長い金髪がさらさらとこぼれ落ち、光を振りまく。
私は眩しさを覚え、思わず目を細めた。
「では、公子様は、ご自身のお力のせいでこのような事態になったとお考えなのですか?」
イリナの問いかけに、私は即答と言って良いタイミングで応じる。
「そうでもなければ、一体どうして? 他に考えようかない」
そして私は、星が瞬く夜空を見上げながらつぶやいた。
「先見が何を見たのか、私は知らない。けれど、そんなものに縛られるつもりは毛頭ない」
先見によると、人はどのように生きどのように死ぬかが定められていると言う。
これが俗に言う『運命』という代物で、先見はそれを見、その結果を預言として私達に告げる。
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