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黒頭公お抱えの先見によると、私は黄帝を屠る運命にあるらしい。
馬鹿馬鹿しい。
自分の一生、自分の生き方が決められているなんてまっぴらごめんだ。
少なくとも今の地位を掴んだのは、私の努力と才覚の賜物だ。
預言や運命に縛られて生きるなど、つまらないこと甚だしい。
そう一気にまくし立てると、目の前のイリナは数度不思議そうにその目を瞬いた。
「……何か妙なことでも言っただろうか?」
その私の問いかけに、イリナはこっくりとうなずいた。
「公子様のような魔道士は、もっと運命や宿命を重要視しているのかと思いました」
「黒の都にいる生粋の魔道士は、そうかもしれないな」
経済や法などが重視される赤の都では、目に見えるものがすべてだ。
実際、私のことを『まやかしで赤頭公に取り入った』と噂する者も多い。
そんな重臣達があのような預言を鵜呑みにするとは。
私はその点も不服に思っていた。
一方大陸の北、黒の都は『魔術の都』とも呼ばれている。
統治者である黒頭公は、その技術が都の外に漏れるのを好ましく思っていないともっぱらの噂だ。
その為、有力者に仕える術士や先見はほとんどが黒の都出身者で占められている。
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