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Ⅲ.砂漠の牙
地平線の向こうから、太陽が姿を現した。
と同時に、私達はこの砂漠のどこかにあるというオアシスを求めて歩き始めた。
けれど、それにしてもどこにあるのかまったく見当がつかない。
行けども行けども、赤い砂の山と谷が続くばかりである。
このままでは、埒が明かない。
私は、目の前にある砂丘に登る。
そして、四方をぐるりと見回した。
と、私の視線がある一点で止まる。
遥か彼方に、何か靄のようなものが見えた気がしたのだ。
「公子様、いかがなさいましたか?」
後から来たイリナに、私はその方向を指し示した。
と、彼女の表情がにわかに険しいものになった。
「どうしたんだ? それよりも、あれは一体……」
「砂嵐でしょう。ここにいるのは、危険です。早く下に」
言うが早いが、イリナは私の手を取って砂丘を駆け下りる。
が、宮殿育ちの私が武人であるイリナの足について行けるはずも無い。
私は敢え無く転んでしまい、うつ伏せの姿勢のまま斜面を滑り落ちて行く。
「公子様!」
一方のイリナは腰を付き、座した状態で滑り降りて来た。
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