Ⅲ.砂漠の牙

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 私の視線に気がついたのだろう。  その人は、さも面白くて仕方がない、とでも言うように声を立てて笑った。 「ああ、これ? このマントは父親の形見なんだ。自分のものじゃないよ」  では、守人の父親が騎士だったということか。  しかし私は、今まで砂漠に騎士が派遣されたという話しは聞いたことがない。 「失礼ですが、なぜあなたはわたし達の居場所がわかったのですか?」  その時、イリナが守人にもっともな問いかけをした。  言われてみれば、その通りだ。  けれど、守人は複雑な表情を浮かべる。 「うーん、それはちょっと難題だなあ。……こんな所じゃ何だから、家でゆっくり説明するよ」  それに、そっちの魔道士さんはそれが目的なんだろう?  そう言って守人は屈託なく笑う。  その裏表のない様子にすっかり毒気を抜かれた私達は、思わず顔を見合わせた。 「じゃあ、決まりだね。視界が悪いから、はぐれないよう気をつけて」  言うが早いが、守人は先に立って歩き出す。  やっとのことで見えた希望の光だ。  その申し出を喜びこそすれ、断る理由はない。  私達はあわててそのあとを追った。
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