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「では、この嵐はわたしたちが呼んだ、ということなのでしょうか?」
イリナの問いかけに、カルマはわずかに肩をすくめて見せた。
「自分にはよくわからない。でも、世の中には不思議なことが多いからね」
「けれど、この嵐がなければ私達はあなたに見つけ出してもらえなかった。砂漠の中を彷徨って、そのまま干からびて死んでいただろうな」
そう、確かにあの時私は死を覚悟した。
だから、せめて巻き込まれたイリナだけは助けたいと思ったのだ。
けれど、そんな私の顔をまじまじと見ていたカルマは、なぜか急に笑い始めた。
理由がわからず、わずかに眉根を寄せる私に守人は言った。
「ごめんごめん。でも公子様は大丈夫。だってまだ死相が見えていないもの」
「死相?」
思わず私は首をかしげる。
カルマは私が今まで接したことのない類の人種のようだ。
その言葉にどのように反応したら良いのか、いまいちよくわからない。
黙り込む私に、イリナが助け舟を出してくれた。
「戦場を渡り歩いていると、自分が生きて戻れるか否かわかるときがある、と先達から聞いたことがあります。それと似たようなものですね」
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