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「ほっ、本当に着るんですか!?」
「当たり前だろ」
ドアの向こうから響く笑いを含む声。帰ってくるのが早すぎるのよ…!
「ほら、入社前の試験だと思って」
「それ出すのってずるくないですか!?」
「ははっ、冗談だよ。でもお仕置きみたいなもんだな」
「お仕置きって…」
なぜ私がお仕置きを受ける側に!?
「じ、じゃあカイさんもお仕置きです」
「俺?」
「そう! 私のこと、誰とでもキスできるみたいに言ったでしょう!」
「あれは、そういう意味じゃ…」
「そういう意味に聞こえます! 傷ついたんですから!」
「分かった、悪かったよ…」
…ああでも、こうして扉越しに話しているのもそろそろ限界。私は深く息を吐きだした。
「もも?」
カイさんの心配そうな声が響く。うん、ちょっと時間かけすぎよね。よし、と気合を入れてドアノブに手をかけた。
「いやごめん、悪かった。どうしても嫌なら…」
そんなカイさんの声を無視して、えいっ! とバスルームの扉を開ける。
リビングのソファの背に腰掛け、ジャケットを脱いだカイさんがグラスを手に目を見開いてこちらを見ていた。
少しだけ緩めた首元、袖を捲ったシャツ。手首に光る男の人の腕時計。
長い脚を持て余すように投げ出したその姿は、本当にモデルのようにカッコいい。
対して私のなんと心許ない格好よ…。
スッケスケのランジェリーが馬鹿っぽくないだろうか…。
「き、着ました、よ」
もじもじと思わず腕で身体の前を隠す。しばらく無言で距離を保っていると、カイさんがグラスをテーブルに置いて立ち上がった。
「もも、こっちに」
そういって一人掛けのソファに腰かけ、手を差し伸べる。私はのろのろと近付き、差し出されたカイさんの手に掌を載せた。座るカイさんを見下ろして、でも恥ずかしくて視線が合わせられない。
カイさんがじっと私を見つめているのが分かる。
「ど、どうですか」
「…うん、すごくいい」
「そ、それは経営者として…? それとも、カイさんとして…」
「両方」
グイっと手首を掴まれて引っ張られる。カイさんの膝の上に跨るように座った。掌で太腿をするりと撫でられ、びくりと身体が揺れた。
「ももは肌が白いんだな…柔らかいし、鍛えてるからかな、ウエストラインも綺麗だ」
「ほ、本人前にして講評しないでください…っ」
「ははっ…これ、すごくよく出来てる…ももの刺しゅう?」
「そ、そうです…んっ」
カイさんの長い指がベビードールの上からブラの刺しゅうの辺り…下胸の膨らみをそっとなぞる。甘い痺れが走り、思わず声が出た。
「この紐もちゃんと組んである…小花柄だけど色が締まってて大人っぽいな。こういうのが好き?」
「あ、あんまりお姫様過ぎないほうが…」
「ここ、リボン解くとどうなる?」
「そ、そこは、えと…ぬ、脱げちゃいます」
「これ…?」
長い指でリボンの端をそっとつかみゆっくりと引いた。シルクのリボンは事も無げにするりと解けて、たっぷりのギャザーで見えにくかった下着が露わになる。思わずふるりと体が震えた。
「すごくいい」
カイさんはひとつ呟くと、ゆっくりと私の唇にキスをした。はむ、と唇を食んでちゅっと音を立てて離れる。
「もも、可愛い」
カイさんの熱い息が唇に触れて、それだけで下腹部が疼く。首に腕を回して、今度は私からカイさんに深いキスをした。
カイさんの熱い掌が太腿やお尻、背中を撫でまわし、ベビードールが肩から落とされた。するりと肌を撫でるその感触にすら体が震え、きつくカイさんにしがみつく。
キスが気持ちよすぎて夢中になる。脚の間にある熱い塊が私に擦りつけられて、自然と腰が揺れた。
「もも」
熱い息を吐き出したカイさんは私を抱えて立ち上がると、ベッドまで横抱きに運んだ。
お、お姫様抱っこ…!
思わずその首にしがみつくと、くつくつと笑い声が頭上でする。
「落とすわけないだろ」
「だ、だって、お姫様抱っこなんて初めてで…」
ゆっくりとベッドに降ろされて、カイさんが覆いかぶさる。視界が薄暗く、カイさんの表情が暗く翳るけどその瞳はギラギラと光ってる。
そして、かぶりつくように唇をふさがれた。
さほど大きくもない胸をやわやわと揉みながら、首筋から耳朶をねっとりと舐め上げる。
時々チリっと刺激が走り、そしてまた舌先で舐める。
大きな掌は胸を覆い、もどかしく揉みしだくだけ。その動きの焦ったさに身体を捩ると、カイさんがふっと息を吐いて耳にキスをした。
荒く息を吐きながら身体を起こしたカイさんが私を見下ろしながら、首元のタイをシュッと抜いて後ろに投げる。シャツのボタンをいくつか開けて覗く肌。うっすらと汗ばんだ首筋が明かりを反射して、匂い立つ大人の色気。
そっと手を伸ばし、カイさんのベストに触れる。滑らかな生地は高級感溢れ、カイさんの身体に沿うよう誂えられている。
掌にカイさんの激しい鼓動が伝わってきた。
「もも?」
「…これ、汚れちゃう…」
「そんなもの、洗えばいい。それに…こんなに人を煽るような格好をしたももと、着衣のままっていうのも背徳的だな」
「…カイさんが着ろって言ったんデス」
そう言うとカイさんはふっと笑みをひとつこぼし、ちゅ、とキスを落とす。唇から頬、首筋に胸元へと降りていき、私の胸を下から持ち上げ寄せられて出来た谷間にねっとりと舌を這わせた。そしてブラの薄いレースの上から頂きをコリコリと引っ掻く。
急な刺激に声が上がる。背中をのけぞらせて快感を逃そうとすると、自然とカイさんの顔に胸を擦り付けるような格好になって、そのままパクリと頂きを口に含まれた。
じゅうじゅうと音を立てながらブラごと頂きを吸われ、舌先で激しく嬲られる。上がる嬌声が抑えられず、シーツをぎゅうっと握り締めた。
いつの間にかブラをずらされ露わになった頂きが、ひんやりと空気に触れる。もう片方の頂きも同じように口に含まれると、快感の波が押し寄せてシーツを蹴った。
ああ、視界も思考も、白く溶けていく。
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